.org/.infoドメイン価格の上限をめぐる議論について

2023年1月17日Staff Note

値上がりを続けるドメイン価格ですが、その元値に対する値上げ幅に上限が設定されているもしくは設定されていたことは国内のドメイン利用者のほとんどが知らない事実ではないでしょうか。

もちろん、全てのTLDに対しその上限が設定されている訳ではありません。

インターネットインフラとしての地位がすでに確立され価格変更による影響が極めて大きいとされる、いわゆるレガシードメイン(.com/.net/.info/.org/.biz)に対しては、かつては値上げ上限が設定されていました。

しかし、2019年に、当時.org/.infoの管理レジストリであったAfiliasとICANNとの取り決めによる値上げ幅の上限廃止、続く.com/.netドメインの段階的値上げ決定等でドメインの価格は値上げ一直線の状況です。

今回お届けするのは、そんな値上げトレンドに歯止めをかけるかもしれない.org/.infoドメインの動きです。

バリュードメインのドメイン担当者としての視点から、ドメイン価格に関する最新ニュースをお伝えします。

.org/.infoドメインの価格上限の撤廃決定に反対が起こる

2019年、大手レジストラのNamecheapが.org/.infoドメインの価格上限を撤廃するというICANNの取り決めに反対を表明しました。

.orgや.infoなどのドメインは多くのインターネットユーザーが使用しており、値上げによる影響が大きいと判断したためです。

最初の表明ではICANNの取り決めを変更することができなかったため、NamecheapはIRP(独立審査プロセス)を開始しました。

IRP(独立審査プロセス)とは裁判所に似た仲裁パネルであり、中立的な仲裁人が争いを解決するための仕組みになります。

ドメインの運営を支えるレジストリやレジストラについては下記の記事で解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。

.org/.infoは利用数の多いドメインなので価格上限撤廃による影響が大きい

.org/.infoはレガシードメインという利用数が最も多いドメインです。

レガシードメインの価格上限が撤廃されてドメイン価格が値上げすることになれば、インターネット全体への影響が大きくなることが予想されるでしょう。

また、.orgは非営利団体向けのドメインとなっており、値上げが行われればWebサイトの運営コストが経営を圧迫してしまう可能性も考えられます。

インターネットを利用している多くのユーザーに影響があるという意味で、.org/.infoの価格上限撤廃に関するニュースが注目されています。

Namecheapによる上限撤廃見直しの申し立てが行われた

Namecheapによる数年にわたる法的申し立ての結果、IRPパネルはICANNが.org/.infoドメインの価格上限撤廃についていくつかの規約に違反していると判断しました。

Ultimately, however, the IRP panel found that ICANN's approval of the 2019 Registry Agreements for .INFO and .ORG without price controls violated the Articles and/or Bylaws in a few ways, including ICANN was not sufficiently transparent in its decision making, the Board did not, but should have made the decision about these particular Registry Agreement renewals, and ICANN did not follow procedures for ensuring promotion of the global public interest.

ICANN

和訳:しかし最終的にIRPパネルは、ICANNが価格統制なしに.INFOと.ORGの2019年レジストリ契約を承認したことは、ICANNが意思決定において十分に透明ではなかったこと、理事会がこれらの特定のレジストリ契約の更新について決定しなかったが決定するべきだったこと、ICANNがグローバルな公共の利益を確実に促進する手続きに従わなかったことなど、いくつかの点で規約および/または細則に違反していると判断しました。

IRPパネルはICANNに対して、今後は同様の違反が発生しないように議論を行うように勧めています。

ドメイン価格の変動は多くのインターネットユーザーに影響を与える要素であるため、オープンな場での議論を行った後に決定されるべきだという判断になります。

ただしIRPパネルによる申請には法的な拘束力はないため、今後ドメイン価格が値上がりしないという確証はありません。

現在、ICANNによる上限撤廃決定に対する再検討が行われている

現在、ICANNによってドメイン価格の上限撤廃決定についての再検討が行われています。

今後は.orgや.infoなどの主要ドメインの価格決定に関して、ユーザーの意見や専門家の助言などを踏まえて議論が行われるでしょう。

昨今では.comなどの主要ドメインが円安の影響もあり値上げをしているような状況です。

Webサイト運営者にとってドメイン価格の値上げは運営コストが上がることにつながるため、今後も価格変動に関するニュースはチェックしておいたほうが良いでしょう。

下記の記事ではドメイン価格の値上げ対策について解説しているので、できるだけサイトの運営コストを抑えたいと考えている人はぜひ参考にしてください。

まとめ:ドメイン価格の値上がりの動向に注目しておきましょう

ここまで、.org/.infoドメインの価格上限撤廃に関する最新ニュースについてドメイン担当者の視点から解説してきました。

NamecheapもICANNもドメインを利用するほとんどの人は存在を知らないと思います。

ただインターネットインフラとしてドメインの「価格」がもつ重要度と影響度を、バリュードメインとして自戒の意味も含め少しでも知っていただけると嬉しいです。

昨今はドメインの卸売価格の上昇や円安の影響により、.comドメインを中心に値上げトレンドが続いています。

今後もドメイン価格の変動に関するニュースが予想されますので、今後の動向を把握したい人は要チェックです。

当サイト「Valu Note(バリューノート)」では海外情報を元にドメインに関する最新ニュースを発信していきますので、今後の記事も見逃さないようにしてください。

ドメイン取得ならValue Domain
この記事を監修した人
中村圭佑
中村 圭佑

GMOデジロック ドメイン管理担当
ドメイン管理7年目。ドメインとDNSオタクがいつの間にか営業管理全般の担当に。
オタク趣味全般を網羅してます。

Posted by admin-dev


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